「手話ができる」当然の社会に
パワハラやセクハラ、過重労働に労働者からのいじめ…。こうした職場でのトラブルは一流と呼ばれる企業でも相次ぎ、若くして自ら命を絶つ人もいるなど今や社会問題となっている。
神戸市内で事務所を構える山本敏彦さん(51)は、このような問題を解決するため、労働環境の改善に取り組む社会保険労務士(社労士)の一人。ただ、ほかの社労士大きく異なるのは山本さん自身が聴覚障害者で、働く障害者の悩みやつらさを身をもって知っていることだ。
県社会保険労務士会によると、山本さんは手話対応ができる県内で唯一の社労士。日常業務をこなしながら、県内各地で障害者向けの無料相談会や障害者差別解消法の解説といった、障害者の自立に向けた活動を行っている。
幼少期から進行性の難聴だったという山本さん。小学4年のとき、担任の教諭から「山本は耳が悪いのによく頑張ってな」と言われ、初めて自分の耳の病気を知った。徐々に耳が聞こえにくくなっていったが、大学を卒業するまで日常生活で困ると感じたことはなかったという。
社会人になり、いくつかの会社で働いた。「耳が悪い」ということで仕事に支障をきたすことがあったり、心ない言葉や態度に傷ついたこともあった。
そんな体験を重ねたことで、「仕事や人間関係で悩む障害者を助ける仕事がしたい」と思い立った。長年の会社勤めから一転、社労士の資格取得を目指した。
2年の勉強の末、平成22年国家試験に合格。この頃には病気も進行し補聴器をつけるようになった。将来全く聞こえなくなった時に備え、妻から勧められた手話もマスターした。
手話で相談に応じてくれる社労士の登場は、多くの聴覚障害者を勇気づけた。毎月200件を超える相談のうち、約3割が聴覚障害者からのものだ。県外から山本さんの事務所を訪れる人もいる。「ジャンルを問わずアドバイスしてくれると聞き、相談に行ってみようと思った」との声も聞かれる。
ただ、相談内容は深刻だ。「上司が筆談に応じてくれない」「親族の結婚式に呼んでもらえなかった」。職場や親族の間ですら差別を受ける障害者の実態を改めて目の当たりにした。
「英語対応の施設は増えたが、手話対応のできる施設や店はほとんどない。手話ができる人が増えれば、障害者が暮らしやすい世の中になる」
視聴覚障害のある人たちにとって、手話は言語だ。筆談より感情を込めてコミュニケーションできるという。山本さんは「社労士だけでなく、弁護士や税理士など、より多くの専門職の人が手話を覚えてくれたら。手話が当たり前の社会になってほしい」と願っている。(木下美希)
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