やめさせない魔法の言葉 
          
          パターン1 
          夫が帰宅しました。
          帰宅するなり妻が暗い顔をして「あなた、お話しがあるの。」 
          夫「なんやなんや、しんきくさい顔して。俺は仕事で疲れてくたくたなんや。話よりも先にメシやメシ。」 
          妻「何よ。私だって疲れているのよ。私は飯炊き女じゃないわよ。ご飯と おかずは台所や冷蔵庫に用意してあるから好きに食べればいいわよ。 もう、私は寝るわね。おやすみなさい。」
          
          というパターンと 
          
          パターン2 夫が帰宅しました。
          帰宅するなり妻が暗い顔をして「あなた、お話しがあるの。」 
          夫「どうしたんや。暗い顔して。ええで、何でも言うてごらん。」 
          妻「それがね、私、長男の太郎の子育てについて悩んでいるの。」 
          夫「へぇ、何を悩んでいるんや。具体的に言ってごらん。」 
          妻「それがね。太郎が暴力事件を起こしたの。」 
          夫「具体的にはどのようなことなのかな。」 
          妻「今日、太郎の小学校の先生から呼び出されて話を聞いたら、花子ちゃんが学校の砂場で他の男の子にいじめられていたらしいの。それで太郎が花子ちゃんを守るために他の男の子をボコボコにしたらしいの。他の男の子達はケガをして血を流したらしいの。そこで他の男の子達の家に私は太郎と一緒に謝りに行ったの。その後、家に帰ってから太郎と話をしていないの。暴力はいけないと思うわ。でも、今回は花子ちゃんを守ろうとしての行動だから、太郎がすべて悪いとも思わないの。」
          
          夫「そうやなぁ。お前の気持ちはわかるわ。それで他には何かないのかな。」 
          妻「私は太郎に『いじめ』はいけないと、今までずっと言ってきたの。でも『暴力』はもっといけないと言ってきたの。太郎にこのあと親としてどのように言い聞かせたら良いかを悩んでいたの。」
          
          夫「それで今のお前の気持ちはどうなんや。」 
          妻「私は他の男の子達にケガをさせたのはいけないと思っているわ。でも、花子ちゃんがいじめられているのをすぐにやめさせようとした結果、太郎としては今回に関しては手を出してしまったのだとも思うの。だから、太郎を叱るわけにも褒めるわけにもいかなくて、あなたが帰るまでずぅ〜と悩んでいたの。」 
          夫「そうかぁ。お前には苦労掛けるなぁ。お前は太郎が他の男の子たちにケガをさせたのは悪いが、手を出したことについては今回に関しては仕方がない。ただ程度がすぎたと思っているということやな。」
          
          妻「そうなのよ。でも、太郎に対してうまく話す自信がないのよ。」 
          夫「わかった。これは男同士の方が話がしやすいかと思うから、俺が今から太郎と話をしてくるわ。話が終わったらみんなで一緒にご飯をたべようか。」 
          妻「あなた、ありがとう。これでずぅ〜と悩んでいたことが解決したわ。本当にありがとう。ご飯はおいしいものを用意するわね。」 
          というパターンをご紹介しました。
          
          結論はどちらも「夕食を食べる。」という結果をのこすことですが、過程が違います。
          
          また、妻の心の不安の残り方も大きく違います。
          
          この妻を貴事業所のスタッフに置き換えて考えてください。 
          
          代表者や上司の立場の方々は今ご紹介したパターン2の夫の対応について考えて下さい。
          
          このような対応をして結果を出すことはむずかしいですか。 
          
          実は、夫は「夫独自の意見や考えは何も言っていません。」 夫は妻にしゃべらすだけしゃべらしただけです。
          
          でも、その結果妻にとっては満足する結果を出すことができましたね。 
          
          このパターン2の夫を院長や上司の立場に置き換えてください。
          
          妻を今回、何か問題を起こした、あるいは注意しなければと思っている、または相談を受けている対象のスタッフに置き換えてください。
          
          内容も「太郎という息子」ではなく、「患者様」「利用者様」などに置き換えてください。 
          
          あなたの事業所(企業・会社)の従業員スタッフも今回ご紹介した「妻」のように色々とストレスをためています。
          
          なかには、「誰が悪いのかわからない」「何が悪いのかわからない」という複雑なストレスをためることもあります。
          
          スタッフが辞めていく大きな原因として今までの経験上、「精神的なストレス」をかかえて辞めていくことが多いと私は感じています。 では、スタッフに辞めて欲しくない「あなた」の立場としてはどうすれば良いのでしょう。
          
          
          ずばり、今回の夫と同じような対応、つまり会話をスタッフとかわすようにすれば良いのです。自然に相手の本音を聞き出すのです。 
          
          「やめさせない魔法の言葉」とは、 
          1、具体的にはどういうことなのか。 
          2、他には何かないのか。 
          3、オウム返し(相手の考えを「こういうことなのですね」と復唱する) の3つです。
          
          これで相手は自然に本音を出します。 
          この3つを場合によっては複数回利用して会話をしていくのです。 
          この「やめさせない魔法の言葉」を使用するときに注意することは、
          「相手の話をじっくりと聞く」ということです。
          
          相手の心を落ち着かせる、整理させる、
          そして答えを相手に言わせる、
          
          ということです。
          
          本音を聞いてくれたという気持ちにさせることが大切なのです。 
          
          逆に「やめさせる最悪の言葉」の一例としては 
          
          部下「売り上げが伸びないことについてのご相談があるのですが、よろしいでしょうか。」 
          上司「なぜ売り上げが伸びないんや。」 
          部下「私の努力が足りなかったからです。」 
          上司「なぜ努力が足りなかったんや。」 
          部下「考えが甘かったのです。」 
          上司「どういうように甘かったんや。」 
          部下「去年の同時期はこれくらい売れていたから、今年も同じくらいは売れると思っていたのです。」 
          上司「根拠もないのに勝手な判断をするな。これからは、ワシが支持した通りに動け。」 
          
          というように言葉尻をとらえて威圧的に振る舞うことです。
          
          今回の部下は見込み違いの細かい背景などを聞いてもらえば「すぅっ」とするのに上司の高圧的な言い方により、その本音を言うことができていませんね。
          
          
          悪いパターンの例を事業所(企業・会社)に置き換えると「お客様や利用者様への対応は今まで通り、あるいはマニュアル通り、あるいは上司の言うとおりにすればよいのだ」という押しつけがあります。
          
          今ご紹介した「やめさせる最悪の言葉」の例での部下は内心「こんなことをいわれるくらいならば相談しない方が良かった。本音が言えなくてストレスがたまるだけだった。」と思うことでしょう。ストレスがたまったときにはこういう部下は辞めていく可能性が高くなると思われます。
          
          
          私が考える良い上司とは「それぞれの社員がその能力を発揮することができている」ときの上司が良い上司であると考えています。
          
          人間は「しゃべりたがり」です。人間は「自分の話や本音を聞いてほしい」のです。特に「不安なとき」「ストレスがたまったとき」に聞いてもらうと安心します。
          
          話しを聞いてもらうだけで「ホッ」とします。優秀な有能なスタッフを辞めさせないためには「辞めさせない魔法の言葉」を使います。 
          
          その際には 
          1、具体的にはどういうことなのか。 
          2、他には何かないのか。 
          3、オウム返し(相手の考えを「こういうことなのですね」と復唱する) 
          を利用しながら、
          相手の心の中にあるものを「ゆったりと構えて聴きましょう。」というスタンス(態度)で本音を聞き出すような会話をして下さい。 
          
          そして、相手が落ち着き、心の中が整理できたようであれば、「オウム返し」をして、その内容を実行するようにすれば良いのです。 「あなた」があなたの優秀な有能なスタッフとの関係をこれまで以上により良きものにすることを心から願っております。
          
          
          話しを聞くことについての大切さはわかったけれども、なかには問題社員もいる。色々な社員についての対応はどのようにしたらよいのだろうか、と悩む上司の方もおられますね。そういう場合は「TKGB社会保険労務士事務所」のメニュー欄で該当するものをご覧いだたければと思います。
          
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